「やる気」の全貌に迫っていく全4回の連載企画!
本記事はその第2回となります。今回は、「やる気」が2つのファクターの両輪で回っているということを明らかにしたいと思います!
前回のまとめ
前回は、やる気の全体像を俯瞰することを目的に、「特性レベル(性格)」・「領域レベル(特定の分野に対するやる気)」・「状況レベル(気分)」のうち、「領域レベル(特定の分野に対するやる気)」に関する話を途中までしました。
具体的には、「◯◯についてやる気がある」という時の、その「動機(=理由)」について、いくつかのカテゴリーに分類していきました。
まだカテゴライズの途中ではありますが、まずは前回お伝えしたカテゴリーを、分りやすいように「サッカーについてやる気がある」という状況を例にして、一枚の図で整理したいと思います。
ただし前回も言いましたが、誰しもがそれぞれの動機を一緒に持ちつつ、そのバランスが人によって異なるということに注意してください!
動機のカテゴリー分類(残り)
さて、では残りのカテゴリーについて整理し、動機の種類の全体像を描きたいと思います。
外発的動機づけについて、今まで見てきたのは課題達成に関するものです。
しかし、私たちが生活する環境では、教室であれ職場であれ人間関係も大変重要なファクターの一つです。
例えば、
「好きな先生に褒められたいから勉強する」
「クラスで仲間外れにされたくないから、下手な点数は取れない」
といったような動機付けのあり方がありますよね。
このような、他者から社会的な評価を求めるような目標を「社会的目標」と呼びます。
そして社会的目標に関しても、マスタリー/パフォーマンス接近・回避という分類により区別することが提案されています。
社会的マスタリー目標・・・他者とのポジティブな関係を求める。(「友達と楽しい時間を過ごしたい」)
社会的パフォーマンス接近目標・・・他者からのポジティブな評価や社会的名声を求める。(「人気者になりたい」)
社会的パフォーマンス回避目標・・・他者からのネガティブな評価や社会的な無能さの露呈を避ける。(「笑われたくない」)
最後に、「実用価値」と「外発的目標」の二つを挙げて、分類を終わらせたいと思います。
「実用価値」は、当該行為によって得られる知識やスキル、または資格などが生きる上で実際的に役に立つかどうかということです。
これは以下の2つに分類されます。
制度的実用価値・・・受験や就職といった、社会的な制度に基づく実用価値
実践的実用価値・・・生活や仕事をする上で、実際に役に立つ実用価値
「外発的目標」は純粋な外発的動機付けの発想に近いもので、物的・身体的な賞罰のために当該行為を行うといったことです。
「1位になれたら、お小遣い増やしてあげよう」
「赤点とったら、夏休み補習だよ」
といったものがそうです。
以上で、動機のカテゴリー分類を一応の所することができました!
では、今回新しくご紹介したことも加えて、また一枚の図にまとめてみたいと思います。
自分や他者のやる気を引き出そうとする時、そもそもどのようなやる気を持っているかによって、アプローチの方法は変わってきます。
ぜひ、上のような図を使って整理してみてはいかがでしょうか?
※今回、上のような形で動機のカテゴリーを分類してみましたが、違った分類の仕方も数多くあります。
例えば、動機が内発的か外発的かを、目的/手段に基づく区別に加え、自己決定感の度合いによってシームレスに捉える見方もあります。
(マスタリー・パフォーマンス接近目標、実践的実用価値などがより内発的に近く、パフォーマンス回避目標、制度的実用価値、外発的価値などがより外発的に近くなります。)
ご興味がある人、もっと詳細に学びたい人は、ぜひ以下の書籍に当たってみてください。
鹿毛雅治(2015)『学習意欲の理論 −動機づけの教育心理学』金子書房.
さて、「これで動機づけについて理解できた!」
と、思ったそこのあなた!
もしかすると、今まで「やる気が出なくて悩んだことが少ない」のではないでしょうか?
もしくは、「なぜあの人はやる気を出さないのか理解できない!」という経験が多いかもしれません。
次ページでは、もしかすると多くの人が見逃しがちな(私がそうでした)、動機づけの「もう片側の車輪」についてご説明したいと思います。
投稿者プロフィール
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【専攻】教育・教育工学
【所属】東京大学大学院学際情報学府修士1年
・「記憶」や「理解」など「学習」に関わる脳内メカニズム
・「学習理論」や「教授方法」
・教育の歴史
・最近の学校教育の動向、教育格差
・EdTech
etc.
脳科学や教育心理学、社会学などの知見を活用して、教育に関わることを全般的にポストしていこうと思います!
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