ノーベル賞の季節まであと少し!
今年2016年のノーベルウィークは10月3日からだそうです。それに先駆けてどの学者が受賞するのか?面白そうだし予想してみようじゃないか、という企画です。
今回は第二弾、第一弾に引き続きノーベル物理学賞の予想をしたいと思います。
ズバり!大地が予想するのは
東北大学電気通信研究所 教授 大野英男先生です!
http://www.csis.tohoku.ac.jp/japanese/overview.html
©東北大学 省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター
半導体の革命
大野先生が受賞すると予想される研究テーマは「希薄磁性半導体における強磁性の特性と制御に関する研究」です。
というと難しいですが、簡単に言うと半導体を使って新たな分野を切り開きましたということです。
コンピューター等、ありとあらゆる電子機器は「0」と「1」の二つの数字で命令のやり取りであったり、情報の記録を行っています。
こういった「0」「1」の情報の処理、計算、記録等は主に半導体と呼ばれる物質が担っています。
半導体とは
半導体は特殊な性質持っており、低い電圧では電流を流さない、高い電圧では電流を流すという性質を持っているので、うまく加工してあげることで、電流の流れる、流れないを「0」「1」として対応させることができます。
実はこの半導体の仕組みを使って様々な処理が電子機器の中では行われています。これを行うのがトランジスタと呼ばれる半導体素子になります。
しかし、「0」「1」たった二つの文字しか使わないので、処理はすごい多いし、電流をたくさん流すので電力消費も半端じゃない、なんて状況が近年では問題になってきています。
情報の処理量が多い大企業のデータセンターに関してはそのコンピューターが発する熱すらも問題になっており、空調のコストを下げるためにFacebook, Googleなんかはあえて北欧にサーバーファームを構えるようになったりもしています。
磁石を使おう!
こういったエネルギー消費を抑えるためには、”磁石”を有効活用すると解決できます。
電気で情報を処理するためには、常に電流を流し続けなければいけないけど、磁石で「0」「1」をコントロールするのであれば電力消費いらないじゃん!という考えです。
HDDを例にとると、ディスクの上に小さい磁石がたくさん並んでいて、磁石が上を向いていれば「1」、下を向いていれば「0」と判別し、データを記録することができます。
磁石は電流を流さなくてもN極とS極が維持できるので、待機時の消費電量が0だし、HDDにもある通り、大量の情報を記憶できるというメリットがあります。
ただ、半導体と比較した時に、どうしても使い勝手が悪いというメリットがありました。
というのも、書き込み、読み込みをする際の消費電力が大きい(待機電力とは違います)という点と、その時のスピードがそこまで早くないためです。
そこで注目されたのが”磁性半導体”です。
磁性半導体は半導体でありながら磁石でもあるという両方の性質を持ち合わせています。
大野先生はこの磁性半導体の発展に大きく貢献しました。
具体的には磁性半導体の作り方から、磁性半導体の磁石としての性質をコントロールする方法に関して画期的な発見をしました。
従来では、磁石は磁石、電気は電気によってのみコントロールできると考えられていましたが、大野先生は磁性半導体の研究を通して電気(半導体)で磁石をコントロールできる可能性を示しました。
先ほど述べたように、半導体(電気で情報をコントロール)も磁性デバイス(HDDのように磁石で情報をコントロール)も一長一短でしたが、電気で磁石を制御することができれば、お互いのデメリットが打ち消しあう、超省エネ・集積化デバイスが誕生するのではと期待されています。
「希薄磁性半導体における強磁性の特性と制御に関する研究」
それでは、最後に大野先生の研究業績についてもう少し詳しく説明したいと思います。
大野先生の一つ目の業績として、磁性半導体の画期的な作成手法を開発したことが挙げられます。
従来、磁性半導体は作ることも加工することも難しかったのですが、低温エピタクシ法と呼ばれるこの手法が開発されたことにより、研究・応用に向けて幅広い取り組みが可能となりました。
また、もう一つの業績として、磁性半導体の磁石としての性質を電気的に操ることができるということを示したことが挙げられます。
磁石の性質は通常磁石ができたときに決まってしまいます。
例えばネオジウム磁石ならとても強かったり、コンパスの針の磁石はそうでもないですよね。
これら磁石の特徴は、磁石を作る時に決まってしまいます。
コンパスの針の磁力が突然強くなって冷蔵庫に引っ付いて離れない、なんてことになったら使い物になりませんね。
大野先生が発見したのが、磁性半導体においてはその半導体内の電子濃度を変えることで磁石の性質をコントロールすることができるということです。
簡単に説明すると、電子は磁石の性質を持つMnという物質の磁性を媒介し、すべてのMnの磁石の方向がそろうように整える役割を果たしています。
半導体の中の電子を増やしたり減らしたりすることで、磁石としての性質が現れたり現れなかったりします。
結果から言いますと、下図のような回路でシンプルに電圧をプラスとマイナスに振ることで、半導体が磁石になったりならなかったりをコントロールすることに成功しました。
これはつまり、電気で磁石を制御することが可能になったことを表しています!
現在は、この原理を応用して省エネで高速なデバイスへの応用が研究されています!
また、電気で磁石をコントロールするという分野は半導体以外にも広がりを見せており、今後みなさんの身近にそういった技術が使われる日が来るかもしれません。
今後も目が離せませんね!
以上、2016年ノーベル賞予想第2弾でした!
参考
“(Ga,Mn)As: A new diluted magnetic semiconductor based on GaAs” Applied Physics Letters http://scitation.aip.org/content/aip/journal/apl/69/3/10.1063/1.118061
“Making non-magnetic semi-conductors ferromagnetic” Science http://science.sciencemag.org/content/281/5379/951
“Electric field control of ferromagnetism” Nature http://www.nature.com/nature/journal/v408/n6815/full/408944a0.html
タイトル画像Credit [www.pakutaso.com]
投稿者プロフィール
- 東京大学物理工学科卒業。現在ブランダイス大学にて物理(ソフトマター・生物物理)を専攻中。Ph.D.1年目。好きな筋トレはトライセプスエクステンション。好きなビールはIPA。
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