【ネタバレ注意】映画シン・ゴジラに登場するカガクBEST3

早くも興行収入が今年の邦画一位になり、話題沸騰中の「シン・ゴジラ」ですが、普段映画はTSUTAYAで借りる僕も、「理系大学院生にとっては興奮するシーン満載ですごくおすすめの映画だよ」という友人の言葉につられて先日映画館に見に行きました。

感想を一言にまとめると、「噂に違わぬ面白さ!」

CGの迫力がすごい、石原さとみがかわいい、といった魅力だけでなく、なんといっても、核兵器・進化・遺伝情報・放射能・極限環境微生物・レーダー・血液凝固剤・スパコンといった最先端の科学が満載で、普段研究室でしか聞かないような言葉が出てくるたび、突っ込みをいれつつ、興奮しつつみていました。また、展開が速く情報量も多かったため、フォローできないところも多々あり、もう一度見たいという感想をTwitterで漏らす人たちの気持ちがよくわかりました。

そこで今回は、僕が個人的に注目した、映画「シン・ゴジラ」に登場する科学トピックBEST3を取り上げたいと思います。それではどうぞ!


1.フェーズドアレイレーダー


まず、声を大にして言いたいのは、当ブログ(ゲリラ豪雨も予測可能?天気予報の新たなカタチ)で紹介したフェーズドアレイレーダーが登場したこと!

え?どこで出てきたかって?あれです。そう、最終形態のゴジラが空に飛んでいる飛行物体を次々と破壊光線で爆撃して、日本中を絶望に陥れたあのシーンです。

ぶっちゃけ上空のヘリとか飛行機を全滅させたときは、こいつ強すぎだろと思った

ぶっちゃけ上空のヘリと飛行機を破壊光線で全滅させたときは、さすがにこいつ強すぎだろと思った。

この時に、ゴジラはフェーズドアレイレーダーのようなものを使って上空を飛行する物体を自動的に探知している可能性が高い、といった解説が(一瞬)されていました。

詳しくは過去記事参照ですが、フェーズドアレイレーダーとは多数のレーダー発振源を時間差で発振させて上空の広範囲を一気に探知することのできる最先端の技術で、アンテナの首を振って上空の雲の様子を見る従来の手法に比べて迅速にデータを取得できることから、ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲のように、急速に発達する雨雲の観測に利用できるのではないかと期待されています。イメージ図がこちら。

黄色い点が個別のアンテナ (左)同時に発振した場合 (右)時間差をつけて発振した場合

黄色い点が個別のアンテナ (左)同時に発振した場合 (右)時間差をつけて発振した場合

ゴジラでどういうことかというと、おそらくこんな感じ。

発振源の発振の時間差をコントロールすることで、体の向きを変えずに上空の敵が分かるはず。

発振源の発振の時間差をコントロールすることで、体の向きを変えずに上空全体の敵の位置が分かるはず。

どうでしょう?イメージ湧きました?つまり体を全く動かさなくても、迅速に全方向のデータが迅速に取得できてしまう、まさに

「ゴジラの第三の目」

 

最終形態に変化した瞬間にまだ実用化されていない最先端の装備を手に入れるだなんて、地球上で最も進化した生物・ゴジラ恐るべし…。


2.ゴジラは進化している?


このブログをよく読んでくださる方は気づいたかもしれません。映画ではゴジラが5段階に形を変化させる様子を「進化」と呼んでいますが、これは正しくありません(参照: ポケモンの進化は進化じゃない?進化生態学入門)。 進化は世代を超えて集団内にある形質が広がることを言うので、ポケモンやゴジラのように一個体のうちで起こる変化は「変態(ヘンタイ)」といいます。

いくつもの世代を超えて集団内に形質の変化が起こることを進化と言います。

いくつもの世代を超えて集団内に形質の変化が起こることを進化と言います。

さらに言えば、地球上で最も進化した生物であるという根拠になっている、遺伝情報が8倍というのも生物学的には正しい根拠になっていません。実は、遺伝情報の大きさと生物としての高度さは相関していないことが知られています (ミジンコのほうが人間より遺伝子数が多いです)

ただこのあたりは、わかりやすさを重視しての表現だと推測させるので、揚げ足をとるのはナンセンスかも知れません。「ゴジラがヘンタイしてるぞ!」なんて官僚が真顔で言っていたら、観客もどんな顔してみていいかわからないですしね。


3.極限環境生物


ヤシオリ作戦成功のキーとなったのが、牧教授が残した暗号の解読でした。

最初はどこから手をつけていいのかわからない対策メンバーたちですが、暗号表が折紙になっていることに気づき、その内容をスパコンで計算して解読した結果、ゴジラの細胞膜に共生する極限環境微生物の存在に辿りつきました。

少しゴジラからはなれますが、この「極限環境微生物」も実は最近のホットなトピックの一つなのです。実世界には、今回のような放射線に耐えられる微生物もいますし、他にも高圧高温、高塩濃度、極度の酸・アルカリなど、人間にとっては極限な環境でも生き延びることのできる微生物が見つかってきています。そして、地球における生命の起源の探索につながるのではないかと期待されています。

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それから、地球外生命体というと映画で出てくる知能を持った宇宙人というのをイメージしがちですが、最初に見つかる地球外生命体は案外地球に住む極限環境微生物のような生命かもしれません。


まとめ


1954年初公開の「ゴジラ」シリーズも29作目ですが、今回の「シンゴジラ」では初回でテーマになった核兵器から最新科学のホットなキーワードまでちりばめられています。そう、ゴジラは常に「進化」し続けているのです。

まだ見てない人は是非映画館に!もう見た人も是非もう一度!

ドラゴン

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参考文献

ゴジラの写真 http://magsoku.blomaga.jp/articles/65406.html

 

投稿者プロフィール

ドラゴン
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4月から博士後期課程1年生。工学部で生命科学の研究をしています。
化学・生物全般に興味があります。

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