リアス式海岸が津波をデカくした
津波の巨大化は浅水変形だけでは終わりません。
津波を巨大化した二つ目の理由は、東北地方の地理的条件にあります。
一度始めの図に戻って、津波の高さの図を見てみましょう。特に大きな津波はどこに集中しているでしょうか?
宮城県の北部から岩手県にかけて、緯度38~41度の地域で大きな津波が記録されていますね。これには、始めに沖合できた海水面の隆起パターンの影響や海岸線の向きの影響もありますが、津波を巨大化させた大きな原因は、地方特有の海岸地形にあります。その海岸地形とは、中学校や高校の地理で学んだアレです。
そう、「リアス式海岸」です。リアス式海岸とは、浸食によって削られ急峻になった谷地形が海と接して複雑な海岸線を形成する地形のことを言います。このような海岸では、入り口が狭く奥行きのある深い湾が特徴的で、良い漁場ができる場所として地域に大きなめぐみを与えています。
しかし地域に恩恵を与えていたその地形の特徴が、東日本大震災では災いとなったのです。浅くなるにつれて次第に大きくなってやってきた津波は、リアス式海岸によって一気に狭い範囲に集中し巨大化していきました。
谷地形が海水に沈んで形成されたリアス式海岸では、湾が上の図のように切り立った山に挟まれています。こうした奥に行くにつれて狭くなる地形に入り込んできた津波は、両側の斜面で反射を起こしながらどんどん水が集中していきます。そして、一気に水かさが上昇し、いとも簡単に街を飲み込んでいきました。
まとめ:津波をもっと知るために
こうして、沖合では最大でも5mくらいであった津波が、①波が海岸に近づいてくる間の浅水変形と、②沿岸部で一気に津波のエネルギーを集中させたリアス式海岸によって、大きなところでは40mにもおよぶ巨大な津波へと”急成長“し、東北地方の海岸部での被害が拡大してしまったのです。
さて、これまで全4回の連載で巨大津波を科学してきました。いかがだったでしょうか?
第一回:「津波ってそもそもなんだ?」
第二回:「津波の生まれかた」
第三回:「津波、太平洋横断の旅」
第四回:「海岸で”急成長”する津波」
と、津波の特徴と、津波が生まれてから海岸へと到達するまで、津波ってこんなもの!というものをもう一度きちんと考えたい!という気持ちで書いてきました。
人々が大きな衝撃をうけたあの日から、5年以上が経ちました。しかし、同じような災害がいつ私たちを襲ってくるのか、現在の科学の力ではまだまだわかりません。
「想定外」との言葉が多く飛び交うようになったあの日から、さらに研究が進められています。
これまでの津波予測システムをより向上させようと、沖合にはたくさんの観測点が設置され、リアルタイムでの観測が可能になりつつあります。
それを用いた新たな予測手法を試みる研究者がいます。
そして、まだまだ分からないことも多くある津波という現象。今後、最新の研究事情にも触れていくので、どうぞお楽しみに!
以上、をさむでした!ではでは!
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