「あの日、海岸に押し寄せた津波の大きさを知っていますか?」
2011年、東北地方太平洋沖地震により発生した津波は、地震から30分後から、各地の沿岸部に押し寄せ、沿岸部の街を丸ごと飲み込んでしまいました。高い丘や、建物の屋上から撮影された津波の映像が、そこに陸地があったとは思えないほどの深く大量の水を映し出していたのを、覚えている方も多いことでしょう。
震災後、津波の痕跡が沿岸部各地で調べられ、津波の高さが調べられました。その規模は驚くべきものでした。
津波の高さはいたるところで10mを余裕で超え、最大では40m近くの高さまで水に浸かっていたのです。高さ40mと言うと、10階建てのマンションの高さに相当します。想像を絶する高さです。M9.0の巨大な地震が引き起こした地殻変動が生んだ津波は、いとも簡単に街を飲み込んでいったのです。
しかし、第二回で触れたように、この地震による地殻変動は5mの隆起だったので、津波の高さも沖合ではせいぜい5mくらいしかなかったはずです。(隆起現象としてはとんでもなく大きいのですが…)なぜ沖合では最大でも5mだった津波が、沿岸部では40mにまで巨大化したのでしょうか?
巨大津波の科学、最終回。私たちに襲いかかってきた津波、その正体に迫ります。
深いほど津波は速い!
津波が沿岸部で大きくなる理由、一つ目の理由が前回出した宿題に隠されています。
前回、チリ沖で発生した津波が地球の裏側の日本まで、1日足らずでやってくるということをお話ししましたね。下の図のように、沖合での津波の速度は√gh(g:重力加速度、h:水深)で表されます。(「津波の振幅が水深よりもずっと小さく、波長が水深よりもずっと大きい」という仮定が成り立つ場合に限ります。この仮定を除くと津波の物理はかなり複雑になりますが、今回はこの仮定のもとで考えます。)
√ghのhは水深ですから、津波は海が深くなるにつれて速くなるという特徴があります。実際の太平洋の平均的な深さの5000mの海域に当てはめてこの式を計算すると、なんとジェット機に相当する時速800kmで速さで伝わることが分かります。
さて、この√ghという津波の速度が、海岸までやってくる津波の大きさにかなり影響してくるのですが、まずは先週の宿題、「津波は深いほど、速く進むのはなぜ?」と疑問を解きほぐしていきましょう。
>>>next: 2/3 なぜ、深いほど津波は速い?
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