津波はエネルギーを伝えやすい
さて、津波は地殻変動で獲得した位置エネルギーを運動エネルギーと交換しながら伝播していきます。
しかし、津波が伝わる間には、水粒子間の摩擦(粘性)で運動エネルギーが熱エネルギーとして失われてしまうので、その分のエネルギーロスを考えなければなりません。
ここに津波がエネルギーを失わずに太平洋を横断できる理由が隠されています。
結論から言うと、津波はエネルギーのロスが少ない。
このことは、第一回でお話しした「津波の波長が大きい」ことに深く関わっています。
波が伝わるとの水粒子の運動をシミュレーションによって可視化することで、その理由について考えていきます。
短い波の水の運動
まず比較のため、波浪のような短い波が伝わるとき、水粒子がどのように動いているのかを見ていきましょう。
赤い点を見てみると、水の運動はほとんど海水の表面付近だけで起こっていることがわかります。
表面近くではそれぞれの粒子が円運動をして波を伝えていますが、深いところの水はほとんど動いていません。
(今夜、お風呂で小さい波を起こしてみてください。水中にある体ではほとんど水の動きを感じないことがわかるかと思います。)
水のような流体は、接触する粒子同士の速度差が大きいほど粘性力がはたらきます。
短い波は、上下に重なり合う水粒子の水平方向の速度差が大きい。
そのため表面の粒子の運動エネルギーは、粘性によって熱エネルギーとして次第に失われてしまいます。
つまり、短い波はエネルギーのロスが大きいのです。
津波の水の運動
一方で、津波のような長い波が伝わるとき、水粒子がどのように動いていのでしょうか?
注目して欲しいのが、短い波とは対照的に、水粒子が表面付近と深海で水平方向に同じ動きをしていることです。津波のような長い波は、大量の水が持ち上がり、大きな位置エネルギーを持ちます。
そのため表面だけでなく深海の粒子も同様に押し出されるようにして運動エネルギーを得るのです。
深海まで水粒子まで大きく運動するため、上下に重なり合う水粒子の水平方向の速度差が小さい。
そのため、長い波である津波は粘性による熱エネルギーへの変換が起こりにくいのです。
つまり、長い波はエネルギーのロスが小さいというわけです。
津波のエネルギーロスが小さいという長い波としての特徴が、津波のエネルギーの伝えやすさの一因となっており、太平洋を横断できてしまうんです。
>>>next: 4/4 伝播速度と突然のまとめ・・・?
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