集団行動の真実 – “前へならえ” のほんとうの意味 –

どうも、NYでアジカンのレコードを日々探し回っているSheva です。

突然ですが: 集団行動、あなたは得意ですか?

ぶっちゃけ僕は苦手です。周りの人に合わせて行動するのが子供の時から不得意で、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、先生には怒られてばかり…。小学校の運動会の集団ダンスを思い出します。

集団行動って、結構難しいですよね。前へならえで列を揃え、周りの人と協力しながら、みんなで声を掛け合って、自分のいくべきところに動く。やるべき行動をとる。頭はわかっていてもなかなか統率は取れないものです。しかし驚くべきことに、野生の動物の中には、信じられないほど統率のとれた集団行動を見せるものがいます。

動物たちは人間のような複雑な脳を持たないにも関わらず、どのように集団行動を成立させているのでしょうか?最新の研究成果を紹介します。

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そもそも集団行動とは?


 

集団行動(Collective Behavior)とは、複数の生物個体が同時に統率のとれた振る舞いをすることを指します。あなたはきっと、小魚の群れが固まってぐるぐると泳ぐのを見たことがあるかもしれませんね(画像)。そう、これがまさに集団行動の好例です。さまざまな動物たちが統率された集団行動を見せ、その光景は時に感動すら呼び起こさせます。
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集団行動のメカニズム


 

魚群の行動はいかにも統率が取れているようにみえますこんなに複雑で統制のとれた行動をどのように達成しているのでしょうか?例えば、それぞれの小魚は集団の全体像を把握している必要があると思いますか?言い換えれば、一匹一匹の魚がどのような行動をとれば、複雑な集団行動が行えるのでしょうか?

そんな素朴な疑問に始まり、米国プリンストン大学の大学院生 Ariana Strandburg-Peshkin 率いるチームは、小魚が集団行動を行う時、どのように小魚の間で統制がとれているのかを行動トラッキング映像の解析により調べました*1。

百聞は一見に如かず、下の動画をみてみてください(11秒間, youtubeより転載)。小魚の群れは2色で分類されているのが分かります。赤い小魚は、この実験の前に訓練され左下の器具からエサが出ることを覚えています。逆に画面上で青に色付けされている小魚は、そのような情報を持たず、ただ群れています。
ひとたび一匹の赤い小魚がエサがあると予想される左下の器具の元に泳ぎ寄ると、それにつられて一斉に他の小魚たちが同じ方向に泳ぎ寄ります。この時、この統一された動きに反応したものから順に赤い円でマークづけされています。

さて、この動画を見てみて、あなたは何に気づきましたか?

赤い魚がより早く反応している気がする青は比較的遅い、それでも全体はかなり統一された行動をとっている…。さまざまなことに気づくと思います。

Ariana達は、魚たちの行動をビデオで(繰り返し)録画、自前のコンピュータプログラムを使って解析しました。すべては、この統率の取れた集団行動の裏に隠されたルールを見つけるため…!o(`ω´ )o

発見した、集団行動を達成する上で最重要のルールは…「自分の近くの個体を目で見て、そいつについていく」。なんともシンプル。つまり、全体像や流れを感じるというよりは、隣のやつが急いでるから俺もそっちに急いでみっか、という適当な選択だったのです!この動画の場合、一匹のエサの場所を知る小魚(リーダー)につられて、他の小魚達(フォロワー)は次々と隣の同僚の動きを見ながら行動していたのです。「隣のやつについていく」という非常にシンプルなルールで、小魚達の複雑な行動の概ねは達成されてしまうようです。
さらに、近年の集団行動の研究結果として、集団の大きさが大きくなればなるほどリーダーの占める割合は少なくてすむという結果がでています*2。つまり、誰か引っ張ってくれる人がいれば、つられた近くの人たちに自分もついていくだけで複雑な陣形を達成できる、というわけです。

さて、ここまでくると、僕らが小学生の時に1万回(?)はやったであろう「前へならえ」「横へ動く」などのシンプルなルールの積み重ねが、運動会での綺麗で統制された集団ダンスのパターンへつながっていく、ということがなんとなく分かってきます。

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まだまだ深まる集団行動の謎


隣人の真似をすることで複雑な集団行動を成立させる。ただ、これは今回の魚の群れ行動というケースの核となるルールであって、このルールが集団行動の全てにあてはまるかどうかはまだはっきりしません。

しかしここで重要なのは、一見複雑に見える行動もいくつかのシンプルな規則の積み重ねで達成されるということです。今回扱った動物の集団行動は動き(movement)に関する情報であり、このような集団行動のメカニズムを解析する研究は高精度の録画・トラッキングデバイスや、画像解析技術の発達に応じて飛躍的に発展しています。今後、野外動物を含めた生物の行動を追いかけるトラッキング解析により、生物の集団行動全体に共通する行動パターンが見出されるかもしれません。

実は、まだまだ疑問は山積みです。そもそもなんで動物は集団行動しなきゃいけないの?あんな面倒くさいことして何かメリットはあるのかな?…そんな疑問は、集団行動の進化, ひいては動物の社会性の進化の議論へと僕らを誘います。あなたはどんな疑問を持ちましたか?コメントお待ちしてます。

Sheva

(過去の記事も読んでみてね!)

参考文献:

Strandburg-Peshkin, A., Twomey, C.R., Bode, N.W., Kao, A.B., Katz, Y., Ioannou, C.C., Rosenthal, S.B., Torney, C.J., Wu, H., Levin, S.A. & Couzin, I.D. (2013) Visual sensory networks and effective information transfer in animal groups. Current Biology

写真:https://www.pakutaso.com , https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%A4%E3%82%8C

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