どうも初めまして、Shevaです。(クリックして自己紹介ページもcheck!) はじまりました、palpunte.com.
ちょっとした暇つぶしに科学の世界の魅力をチラ見したいかた、そんなあなたの科学欲にガチ理系東大生がお供します。これから宜しくお願い致します!
さて、今回は初めての投稿ということで、自己紹介がてら僕の専門から進化(Evolution)ってなに?というテーマでポストを書いてみようと思います。 進化という言葉を聞いたことがない、という人はほとんどいないのではないでしょうか。「人類の進化」「地球の進化」「進化するiPhone」「本田圭佑、やっぱVVVに行ってからが格段に進化したよな(古い?)」 でも、進化ってなにかちゃんと説明できますか?うーん、なんとなく進歩しているような…。時とともに変わっていくこと?猿からヒト? 進化(Evolution)という言葉には厳密な定義があります。進化, Evolutionという言葉はそのわかりやすいイメージからいろんなヒトがいろんな文脈の中で使いたがるのですが、同時に誤解を生みやすい言葉でもあり、実はかなりの頻度で間違って使われています。 例えば!みなさんは進化という言葉を聞いてなにをまず思い出しますか?僕は… そう、ポケモンです。 今やスマホでgoするゲームになってしまいましたが、僕の脳裏に焼き付いているのはこのゲームボーイの画面です。この「おや..? OOのようすが…?」と出た時には、鼻息を荒くして興奮したものです。 実は、これも進化ではありません。成長(growth)です。(*追記1) “…え、進化と成長の違いってなんなの?” いい質問です。今日は、進化生態学を専門とする学生としてそんな誤解を正し、また一つみなさんに進化してもらうためにこの記事を書きました(<-これも”進化”の間違った使い方)!
(右から二番目のチラ見が気になる)
さて。まずは進化の定義をちらっと見てみましょう。
“生物は不変のものではなく,長大な年月の間に次第に変化して現生の複雑で多様な生物が生じた,という考えに基づく歴史的変化の過程 “(大辞林)
これはかの大辞林(第3版)からの抜粋です。…ふむ、どうでしょうか。ちょっと難しいですが、「長大な年月の間に次第に変化して」というところが大事です。
ちょっと背伸びして、アメリカの教科書ではどう定義されているのでしょうか?みてみましょう。
“Evolution is a process that results in heritable changes in a population spread over many generations.“(quote from talkorigins.org)
意訳すれば、
訳”進化ってのは遺伝しうる変化が幾つもの世代を経てある集団にひろまる過程のことだよ”
こちらはかなりシンプルです。なんとなくイメージがつかめてきましたか?
ことばだけでイメージするのは難しいので、進化の”例”を見てみましょう。とてもシンプルな例を使います。
ある生き物を考えます。説明のためにめちゃくちゃ単純な架空の生きモノ、パルプン君を使います。
パルプン君には白と黒と2種類おり、この形質(ある特徴のこと)は遺伝します。それぞれの個体は自分のクローンを作り(生物学の世界では単為生殖といいます)、次の世代に子孫を残していきます。
いま、ここにパルプン君のとある集団があります。この時代は乾燥した時代なので、白の方が黒よりかなり多いです。
このパルプン君の集団をみて、あなたはパルプン君の”普通の色”を聞かれたら何と答えますか?
「白」ですよね。若干黒いパルプン君が混ざっていますが、これはパルプン君という種の中の「エラー」あるいはバリエーションと見ることができます。たまたま首の短いキリンがいても、キリンという種は全体的に首が長い、というのが変わらないのと一緒です。このように、「生物種」というのは一つの個体によってきまるのではなく集団の傾向によってきまるということも非常に重要です。
さて、時間とともに生息地一帯の気候が湿ってきたとしましょう。
パルプン君は自分と同じ色の子供を産みますが、乾燥している気候だと、そもそも白いパルプン君は子供を産むまでに生き延びられる可能性が低くなります。黒いパルプン君は逆に生存確率が上がってくるので、徐々にその数を世代とともに増やします。
まだまだ湿ってきました..
そして最終的に、とってもジメジメした気候になりました。
この集団の中のほとんどのパルプン君は黒になっています。もはや、パルプン君の”普通の
色”を聞かれても誰も「白」と言いません。パルプン君の普通の色は「黒」です。
そして….これがまさに、
「パルプン君の色が白から黒に進化した」
ということなのです!
さて。上の例を見ていて、あなたはなにに気づきますか?ポケモンの進化と全く違いますよね。
まず重要な違いとして、
①進化は一つ一つの個体に起こるのではなく、集団に起こるモノだ
ということがあります。難しく言えば、進化は集団内の形質の頻度の変化のことを指し、個体の形質の一世代のうちの変化をささない、といえます。
だから本田圭佑は進化しないし、ポッポはピジョンに進化しないのです。どちらのケースにおいても、本田圭佑とピジョンは成長(=一個体が一つの世代の中で変化していく)しているのです。
さらに、
②進化は進歩・発展のことではなく、変化のことだ
上の例で、パルプン君の色は、時間とともに白から黒へと進化しました。でも、黒は白より優れているのでしょうか?これは進歩なのでしょうか?
違いますよね。環境に適応しているという点では進歩ですが、それはあくまで特定の環境においての話です。
進化は、世代とともに集団が変化していくことであり、進歩や発展とは別の概念なのです。
日本語には「退化」という言葉があります。真っ暗な洞窟に住む魚の種には、その歴史とともに目を完全に失った種がいます。
左が普通の魚、右が洞窟に住む魚(cave fish).目が完全に失われている。
この現象を”目の退化”というように表現することがありますが、この表現は誤解を生みやすく、厳密には退化は進化の一つです (つまり退化と進化は反対の考え方ではない)。光が届かない洞窟では、目を持つことはさほど有利ではなく、目を作らずにそのエネルギーを他の感覚に使うような個体が集団内にひろまるという変化(進化)が起きたのです。
進化について、すこしわかっていただけたでしょうか。
自然界には、驚くほど多様な生物がいます。それぞれの生物の美しさ、機能性、そしてその多様性そのものは学者ならず多くの人々を魅了してきました。そして、我々人間自身もその進化の産物の一つです。
1859年に, かのチャールズ・ダーウィンが発表したこの進化の考え方は、歴史の中で多様な生物がどのように現在地へたどり着いたかを教えてくれます。また、この進化の考え方は、経済学、言語学、理論宇宙学など様々な分野に応用されています。
でも、このシンプルな進化の理論は本当にすべての生き物にあてはまるのでしょうか?先ほどのような単純な例なら比較的簡単に説明できます。じゃあ、もっと複雑な形質の進化はどうなんでしょうか?
たとえば、人間を含めた生き物の目は、どのように進化してきたのでしょうか?
もっと言えば、生き物の行動の進化はどんなプロセスを経てきたのでしょうか?
これからのブログでもっと進化のディープな世界にお連れします。今日はここまで。
Sheva
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(*追記1)
– ポケモンの”進化”あるいは”成長(growth)”について –
僕のブログの最初のポストでは、「ポケモンの進化は進化ではなく成長(development)である」と記載していました。
“神経科学学徒さん”より、コメント欄にて”成長”の英訳はdevelopmentではなくgrowthであるという指摘をいただきました(有難うございます!)。
それを受けて修正を行いましたが、短い追記の考察を書きたいと思います。
僕が最初ポケモンの進化をdevelopmentと書いた理由は、感覚的に、最終進化系を”成体”と考え、その前の個体を”幼体”と捉えていたためでした。その場合、最終進化系に至るまでの過程は成長(growth)あるいは発達(development)と捉えることができると思います。
ただ、ご存知のようにポケモンは必ずしも年齢(レベル)とともに最終進化系になる必要はなく、コイキングはコイキングのまま100Lvになることができます。また、コイキングはコイキングと卵を産むこともできます。
そう考えると、ポケモンの初期進化形態も成体なので、発達あるいは成長は定義として正しくないのかもしれません。
変態形成…?あるいは単に”変身”?新たな定義が必要かもしれませんね。
画像参照元:
http://www.human-evolution2.de/interstellarspaceflight.htm
http://www.nepaldaily.com/?p=486
http://togetter.com/li/408389
http://www.actionbioscience.org/evolution/cavefish_a_study_in_evo-devo.html
関連
学術的にはdevelopmentは発達や発生と訳すと思います。成長はgrowthです。(cf. 生物学辞典第5版/岩波書店、行動生物学辞典/東京化学同人)
コメント有難うございます!修正とともに、考察を追加しました! sheva